「体にとって重要なミネラルは?」と聞かれたら、何が思い浮かびますか?マグネシウム?カルシウム?多分、真っ先に亜鉛を思い浮かべた人はそれほど多くはないと思います。しかし、亜鉛は絶対に知っておいてもらいたい非常に大切なミネラルです。亜鉛不足の症状のひとつとして、匂いや味が感じられなくなることが挙げられます。これってなんだか最近よく聞く気がしませんか……?そうです!新型コロナウイルスの症状として、嗅覚・味覚障害が数多く報告されています。この症状は、亜鉛不足からきている可能性があるのです。なぜ亜鉛不足が嗅覚・味覚障害を引き起こすのでしょう?
体内に病原菌が侵入してきた時にそれらを撃退してくれるのは、白血球の一種である好中球、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞などですが、これらの免疫細胞の活動を助けるために、亜鉛は不可欠です。それと同時に、亜鉛は嗅覚・味覚を正常に機能させるために重要な体内の酵素にとっても必要不可欠なミネラルです。(出典1)ですから、私たちの体は普段から亜鉛を蓄えていますが、感染の初期段階で病原体の増殖を抑えるために大量に使われてしまうと、嗅覚・味覚の機能のために使える亜鉛が不足し、匂いや味がわからなくなってしまうのです。
実は亜鉛欠乏症は非常に一般的であり、ある研究(出典2)によると、発展途上国では人口の25%の人が、先進国では約15〜20%の人が不足していると言われています。同じ研究ではまた、亜鉛が不足している人はHIVやC型肝炎などのウイルス感染のリスクが最も高いことも明らかになっています。その他にも、亜鉛の欠乏は爪の白い斑点、脱毛、食欲不振、不安、下痢、傷の回復の遅れなどの症状も引き起こします。
亜鉛が足りているかどうかを検査するのは、実際には簡単ではありません。オーストラリアでは、「Zinc Tally」という液体を使用する味覚テストがあります。この液体を口に含み、味が分かれば亜鉛欠乏症ではありませんが、分からない場合は不足している可能性があります。(ちなみにこの亜鉛はひどい金属味がします。)
では、亜鉛を摂取するためおすすめの食材をご紹介しましょう。まず挙げられるのはやはり牡蠣ですね。缶詰の燻製牡蠣でもOKです。そして、ロブスター、カニ、カボチャの種、ゴマ、小豆、松の実、カシューナッツ、鶏肉、ひよこ豆、ヒマワリの種、枝豆、黒豆、牛肉も亜鉛の優れた供給源です。(ただし牛肉から摂取する場合は、穀物飼料ではなく、農薬を使用しない牧草のみで育てられ、成長ホルモンも使用されていないオーガニックビーフをおすすめします。)
特に感染症が気になる冬の間は、 亜鉛とエルダーベリーの飴をバッグに欠かさず入れておいて、積極的に摂取するようにしています。亜鉛はウイルスが喉や鼻咽頭で増殖するのを抑えてくれるので、予防としてだけでなく、感染症にかかってしまったと感じた時にも摂取しています。また健康な時でも、遺伝物質の修復、皮膚の治癒、成長、そして嗅覚や味覚を含む体内の様々な機能を司る300種類以上の酵素の活性に必要不可欠なので、毎日の食事に意識して取り入れています。
このように、食生活やライフスタイルの改善で免疫システムを強化する方法についてまとめた新著『最強でエレガントな免疫を作る100のレッスン』が、2月25日に発売されました。亜鉛以外にも、すぐに実践できるヒントがたくさん含まれています。興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。
Lots of Love, Erica
出典1:Equils O (2020) Proposed mechanism for anosmia during COVID-19: The role of local zinc distribution 7: DOI: 10.15761/JTS.1000397.
出典2:Read, S. A., Obeid, S., Ahlenstiel, C., & Ahlenstiel, G. (2019). The Role of Zinc in Antiviral Immunity. Advances in nutrition (Bethesda, Md.), 10(4), 696–710. https://doi.org/10.1093/advances/nmz013
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