みなさんもご存知の通り、スペイン、南イタリア、ギリシャなどの地中海沿岸諸国では「シエスタ」という昼寝の習慣が何世紀にも渡り今日まで受け継がれています。その効果は科学的にも証明されており、約400人の中年男女を対象に行われた最近の研究(出典1)でも、昼寝は元気が回復するだけでなく、血圧低下と心臓発作予防にも効果的であることが判りました。午後早目の時間帯に昼寝をした被験者は、そうでない被験者に比べ血圧が低く、日中起きている時も夜間の睡眠時でも血圧が低いままでした。また、昼寝をした高血圧の被験者は、そうでない被験者よりも、少量の抗高血圧剤で済んだとのことです。さらに、長めの昼寝(最高1時間程度)をとった被験者は、血圧の測定結果が最も良かった一方で、短い昼寝は血圧低下の他に、元気回復、パフォーマンスの向上、その後もさらに良い状態が続いたのです。このように血圧が低い状態を保つことは、心臓発作の罹患率を下げる鍵にもなります。(※この研究は血圧に影響の出る他のリスク因子である年齢・性別・BMI値・喫煙状態・塩分摂取量・飲酒・運動・コーヒー摂取などを考慮した結果を示しています。)
また、別の研究(出典2)では、シエスタの習慣により心血管のストレスが減少するため、冠動脈疾患死亡率が37%も低下したということが判っています。さらに、睡眠の研究者によると、昼寝には血圧の低下や心臓病予防だけでなく、創造力・運動能力・記憶力・学習能力を向上させる最適な方法の一つであり、事故や失敗を防いだり、気分を高める効果もあるということです。
さらに、スポーツ選手を対象に行われた研究(出典3)では、30分の昼寝が選手たちのパフォーマンスを昼寝後の数時間向上させたということが判りました。選手たちのパフォーマンスが向上しただけでなく、注意力が高まり、走行速度や反応時間も早くなったのです。因みにレアル・マドリードのサッカーチームは、トレーニングルームに選手とスタッフがいつでもシエスタが取れるように、寝室を81部屋も用意しているそうです。また、別の研究(出典4・出典5)では、昼寝が注意力と意識レベルを劇的に改善するということが明らかになっています。
その他にも、昼寝には免疫機能の向上、ホルモンバランスの保持、ストレス軽減、気分の向上、イライラの低下、睡眠負債からの回復、疲れた心と体をリセットしてくれるなどの効果があります。多くの専門家によると、10~30分間の昼寝が最大限に効果を引き出し、その最適な時間帯は、特に体のエネルギーレベルが下がる13~15時、17~19時の間だということです。
米国や英国をはじめ、その他の多くの国々で、昼寝(シエスタ)は「パワーナップ」と呼ばれています。NASA、グーグル、フェイスブックなどの企業では、仕事中にパワーナップを取れるようにするために、職場に「エナジーポッド」呼ばれる睡眠装置を設置しているのです。(画像は色々なスタイルのエナジーポッドです。)また、サッカーチームのマンチェスター・ユナイテッドは、夏の長時間の練習の合間に昼寝ができるようにエナジーポッドを設置したそうです。
昼寝とはやる気がなく怠けるということでは決してありません。スポーツ選手、血圧の数値が気になる人、元気を回復したい人をはじめ、誰にでもオススメです。昼寝の効果を最大限に活用して、毎日充実した日々を送りましょう。
Lots of Love, Erica
(出典1): Kallistratos, M.S., et al., “Association of mid-day naps occurrence and duration with BP levels in hypertensive patients. A prospective observational study,” European Society of Cardiology, 2015 Congress. August 29, 2015.
(出典2): Naska, A., et al., “Siesta in healthy adults and coronary mortality in the general population,” Archives of Internal Medicine, 2007, vol. 167, 296-301.
(出典3): Waterhouse, J. G. et al., “The role of a short post-lunch nap in improving cognitive, motor, and sprint performance in participants with partial sleep deprivation,” Journal of Sports Sciences, 2007, vol. 25, pp:1557-66.
(出典4): Milner, C. E. et al., “A dose-response investigation of the benefits of napping in healthy young, middle-aged and older adults,” Sleep and Biological Rhythms, 2008, vol. 6, pp: 2–15.
(出典5): Sara Studte, S., et al., “Nap sleep preserves associative but not item memory performance, Neurobiology of Learning and Memory, 2015; 120: 84 DOI: 10.1016/j.nlm.2015.02.012
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