先週は「牛乳の迷信」についてのお話をしましたが、今日は牛乳の代わりに骨を丈夫にしてくれる身近な7つの食品をご紹介します。まずは、日本の伝統食である納豆から始めましょう。
1. 納豆
納豆には、骨密度を高めるビタミンK2が豊富に含まれます。閉経前の女性を対象に行った研究(出典1)によると、納豆を多く摂取した女性の方が、そうでない女性よりも骨格形成が良かったということが判りました。さらに、東京大学の研究(出典2)では、納豆の摂取が日本人女性の骨折率低下に大きく貢献しているという結果も出ています。
2. 緑茶
ある研究(出典3)では、1日コップ3杯を上限とする緑茶の摂取で、被験者の股関節骨折率が30%低下したという結果が出ました。また、アメリカで行われた研究(出典4)では、1日コップ4〜6杯の緑茶(500mg相当のポリフェノール)を摂取したところ、3ヶ月後には骨の状態に改善が見られ、さらに6ヶ月後には筋肉強化の効果がみられました。緑茶には骨芽細胞を活性化させ、破骨細胞の働きを抑える効果があるのです。
3. プルーン
プルーンも骨を丈夫にする優れた果物です。プルーンには、強力な抗酸化物質で骨量減少を防ぐポリフェノールが豊富に含まれます。また、骨の形成にとても重要な役割を果たす2つのミネラル(ホウ素、銅)も多く含まれています。閉経前のアメリカ人女性を対象にした研究(出典5)では、1日に約10粒のプルーンを摂取するグループと、乾燥リンゴを摂取するグループに分かれ、骨密度を1年間調査したところ、プルーンを摂取したグループは、前腕と脊椎の骨密度が著しく高いという結果が出ました。それは、他の研究(出典6・7・8)でも立証されているように、プルーン摂取が骨量減少を遅らせ、骨代謝回転率が抑えられたからです。(もちろん、リンゴも美容や健康の効果は高いので、積極的に摂取してくださいね。)
4. ザクロ
ザクロには骨量減少などの更年期症状を抑える効果があると言われています。ザクロもポリフェノールが豊富で、さらには骨形成に効果のあるエストロゲン(エストラジオール、エストロン、エストリオール)を含みます。ただ、閉経周辺期・閉経後になるとエストロゲンは減少していき、私たちの骨は弱くなってしまいます。日本で最近行われた動物実験(出典9)によると、卵巣を摘出されて急速な骨量減少が進んでいる状態のネズミ(閉経後の女性の状態を想定)にザクロのエキスと種を2週間与えたところ、骨密度が通常値に戻るという結果が出ました。これは、ザクロに含まれるエストロゲンが活性化したためだと推測できます。
5. オレンジ
ビタミンCは骨と皮膚のコラーゲンを形成するのに必要不可欠とされており、ビタミンC不足はもろい骨をつくる要因となりうることが指摘されています。動物実験(出典10)で、オレンジの果肉をネズミに与えたところ、骨強度が著しく改善されました。また、他の研究(出典11)でも、ビタミンCを多く摂取している女性は、骨密度が高いことが判りました。このような研究結果から、ビタミンCを多く含む野菜や果物(オレンジ、イチゴ、パパイヤ、芽キャベツ、パプリカ、メロン、パイナップル、キウイ、カリフラワーなど)は、骨を丈夫にするという観点からも積極的に摂ることが推奨されます。ちなみに、繊維などが取り除かれたジュースなどは血糖値を急に上昇させてしまう恐れがあるので、できればまるごとの状態で食べることが理想的です。
6. ヨーグルトやチーズ
先週の牛乳に関する投稿で紹介したスウェーデンの研究(出典12)では、ヨーグルトやチーズのような発酵乳製品は牛乳と真逆な効果をもたらすことが判りました。発酵乳製品は摂取するほどに股関節骨折率と死亡率を減少させ、この実験の被験者のそれも10〜15%も下がったのです。発酵乳製品とは、ヨーグルト、ケフィア、サワークリームなどが挙げられます。中でもヨーグルトは酸化ストレスと炎症を抑える他、バクテリアの働きに身体にとって好ましい効果があり、D-ガラクトースの含有量も牛乳より大幅に低いのです。(他の発酵乳製品もガラクトースとラクトースの含有量はかなり低いです。)但し、原材料欄をしっかりチェックして、砂糖や人工甘味料を含まないプレーンヨーグルトを選ぶことを心がけてください。
また、チーズは納豆と同じく骨を強くするビタミンK2を含みます。私が好きなのは、オランダのゴーダチーズやエダムチーズ、北フランスのブリーチーズです。他には、チェダー、コルビー、スイス、グリュイエールのチーズもおすすめです。伝統的手法で作られたものを選び、プロセスチーズなどの加工品は避けるようにしてください。
7. マグネシウムを豊富に含む食材
骨密度はマグネシウムの摂取量に関連するということがある研究(出典13)により立証されています。しかし、残念ながら、加齢に伴い骨に含まれるマグネシウムの量は減少してしまうため、日々の食事で補う必要があります。マグネシウムはカルシウムを吸収するためにも、ビタミンDを活性型に変換するためにも大切な栄養素なのです。マグネシウム摂取のためにオススメの食材は、ほうれん草や濃い色の葉物野菜、アボカド、玄米、ゴマ、アーモンド、かぼちゃの種、ひまわりの種、キヌア、大豆、ダークチョコレート(カカオ70%以上のもの)、加工されていないカカオパウダー、カカオニブスなどです。
<最後に>
ただ、上記の食品のうち何か1種類を摂取するだけでは、強い骨作りは成功しません。骨形成に効果がある最低20種の栄養素(ビタミンD、ビタミンC、ビタミンK2、カルシウム、マグネシウム、リン、ホウ素、銅など)をバランスよく摂取することを心がけましょう。これらの栄養素は、それぞれの効果を独自に発揮するのではなく、まとめて摂って初めて効果が発揮されるのです。
そして、強い骨作りには食事だけでなく運動も大切です。数え切れない程の研究からも、定期的に運動している人たちは骨折頻度が低いことが判っています。ウォーキングは股関節の骨折予防に効果的ですが、これでは手首骨折を防ぐことができないので、上半身を鍛えるのも忘れないでください。たとえば、週2~3回 、約5~10分間、ダンベルを使ったトレーニングを始めてみるのはいかがでしょう。ヨガにダンベルトレーニング、そこにウォーキングを加えると健康な骨を維持するのにとても効果的です。
みなさん、これらの食品と適度な運動を生活に取り入れて、丈夫な骨を維持しましょう。後日改めて、カルシウムを豊富に含む食品についてご紹介します。どうぞお楽しみに!
Lots of Love, Erica
(出典1) Katsuyama, H., et al., “Promotion of bone formation by fermented soybean (Natto) intake in premenopausal women”, J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo), 2004, vol. 50. No, 2, pp: 114-20.
(出典2) Kaneki, M., et al., “Japanese fermented soybean foods as the major determinant of the large geographic difference in circulation levels of vitamin K2: possible implications for hip fracture risk,” Nutrition, 2001, vol 17, no. 4, pp: 315-21.
(出典3) Shen, C. L, et al., “Green Tea and Bone metabolism,” Nutrition research, 2009, vol. 29, no. 7, pp: 437-456.
(出典4) Schen, C. L, “Effect of green tea and Tai Chi on bone health in postmenopausal osteopenic women: a 6-month randomized placebo-controlled trial,” Osteoporos Int,. 2012 vol. 23, no. 5, pp: 1541-52.
(出典 5) Hooshmand, S., et al., “Comparative effects of dried plum and dried apple on bone in postmenopausal women,” British Journal of Nutrition, 2001, vol. 106, no. 6, pp: 923-930.
(出典6・7・8) Franklin M, et al., “Dried plum prevents bone loss in a male osteoporosis model via IGF-I and the RANK pathway,” Bone, 2006, vol. 39, no. 6, pp: 1331-1342.
Bu S.Y., et al., “Comparison of dried plum supplementation and intermittent PTH in restoring bone in osteopenic orchidectomized rats,” Osteoporosis Int, 2007, vol. 18, no. 7, pp: 931-942.
Bu S.Y., et al., “Dried plum polyphenols inhibit osteoclastogenesis by downregulating NFATc1 and inflammatory mediators,” Calcif Tissue Int, 2008, vol 82, no. 6, pp: 475-488.
(出典9) Mori, J., et al., “Pomegranate extract improves a depressive state and bone properties in menopausal syndrome model ovariectomized mice,” J Ethnopharmacol, 2004, vol. 92, no. 1, pp:93-101.
(出典10) Morrow, R., et al., “Feeding Orange Pulp Improved Bone Quality in a Rat Model of Male Osteoporosis,” Journal of Medicinal Food, 2009, vol 12. No. 2, pp: 298-303.
(出典11) Morton D., et al., “Vitamin C supplement use and bone mineral density in postmenopausal women,” Journal Bone and Mineral Res, 2001, vol. 16, no. 1, pp: 135-140.
(出典12) Michaëlsson K., et al, “Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies,” British Medical Journal, October 2014, doi: 10.1136/bmj.g6015.
(出典13) Ryder KM et al., “Magnesium intake from food and supplements is associated with bone mineral density in healthy older white subjects,” J Am Geriatr Soc, 2005, vol 53, no. 11, pp: 1875-80.h
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