現在世界でおよそ4,700万人が認知症を患っていると言われています。世界保健機関(WHO)は、2030年に7,500万人、そして2050年には今の3倍に増加すると予測しています(出典1)。
認知症は単なる“老化現象”ではありません。日々の過ごし方(食事・睡眠・エクササイズなどの生活習慣)によって十分に予防することができる病です。
しかしながら時間に追われた忙しい毎日を送っていると、生活のリズムは乱れがちになりますし、そんな中でエクササイズを習慣化するというのは、そう簡単なことではありません。
そこで、本日はみなさんがエクササイズを始めたくなるような、最新の研究をご紹介したいと思います。
今年の3月にスウェーデンで発表されたこの最新の研究(出典2)で、 カーディオバスキュラーフィットネス(有酸素運動に対する心肺能力)が高レベルな女性は、それが中レベルの女性に比べ、認知症発症リスクが88%低いということが判明したのです。
この研究は1968年から、当時38歳から60歳の女性を対象に、2012年までの44年間に渡り行われました。その間、被験者は6回の認知症のテストを受けています。
最終的に認知症を発症したのは、カーディオバスキュラーフィットネスが低レベルのグループでは32%,中レベルのグループでは25%だったのに対し、高レベルのグループではわずか5%だったのです。
さらに、認知症発症年齢にも大きな差が見られました。中レベルグループの被験者が79歳であったのに対し、高レベルグループの被験者は90歳でした。
このような結果から、 カーディオバスキュラーフィットネスが高レベルの女性は、中レベルの女性に比べ、認知症発症の可能性が88%低いことが明らかになりました。また低レベルの女性は、中レベルの女性に比べ、認知症発症リスクが41%も高まることも判明しました。
600人以上の70歳を対象に、3年以上追跡調査した研究(出典3)でも、最も頻繁にエクササイズをしている被験者の脳の萎縮が最も少なかったことが判っています。
また別の研究(出典4)では、エクササイズによって、BDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれるタンパク質を増加させることが判っています。このBNDFとは、新しい神経細胞の発生を助けたり、脳機能を向上させたりする物質で、うつ病緩和にも効果があったり、幸せホルモンのエンドルフィンを放出すると言われています。そういったことから、エクササイズは“自然の抗うつ薬”と呼ばれるほどの効果が認められているのです。
また、エクササイズは高血圧、高コレステロール、糖尿病予防に効果があることは、広く知られています。これらはアルツハイマー病と認知症に類似した症状に関連性があるとされている症状です。
ここまでお読みいただいて、エクササイズの素晴らしい効果はお分かりいただけたと思います。それでは、どの程度のエクササイズをすればその効果を実感することができるのでしょうか?多くの専門家は、少なくとも30分以上のエクササイズを週に5回行うことを勧めています。
運動が苦手な方やまとまった時間が取れない方などは、10分から15分程度の短いエクササイズを数回行うようにして、トータルして1日に30分のエクササイズをするようにすれば良いでしょう。
もちろん、ジム通うのは大変効果的だと思います。ですが、わざわざ通わなくても毎日の行動にほんの少しの負荷をかける方法でもしっかりエクササイズを行うことができます。例えば、1つ前の駅で降りて歩く、エスカレーターではなく階段を使う、意識的に早歩きをする、車ではなく自転車で出かける、昼食休憩時間に散歩をする、等々。または、少し早起きをして、週に数回朝に30分のパワーウォークを始めて見るのも良いですね。
エクササイズは健康や美しいエイジングのためだけではなく、認知症予防にも効果を発揮します。また精神的・感情的に幸福感や充足感をもたらしてくれるのです。そんな素晴らしい効果を得られるエクササイズを始めてみはいかがでしょうか?頑張った分のその効果は必ず実感することができるはずですよ。
Lots of Love, Erica
出典1: WHO: April, 2017. http://www.who.int/features/factfiles/dementia/en/
出典2: Hörder, Helena & Johansson, Lena & Guo, Xinxin & Grimby, Gunnar & Kern, Silke & Ostling, Svante & Skoog, Ingmar. (2018). Midlife cardiovascular fitness and dementia: A 44-year longitudinal population study in women. Neurology. 90. 10.1212/WNL.0000000000005290.
出典3: Gow, A.J., Bastin, M.E., Maniega, S.M., Hernández, M.D., Morris, Z.A., Murray, C.F., Royle, N.A., Starr, J.M., Deary, I.J., & Wardlaw, J.M. (2012). Neuroprotective lifestyles and the aging brain: activity, atrophy, and white matter integrity. Neurology, 79 17, 1802-8.
出典4:Sleiman, S. F., Henry, J., Al-Haddad, R., El Hayek, L., Abou Haidar, E., Stringer, T., … Chao, M. V. (2016). Exercise promotes the expression of brain derived neurotrophic factor (BDNF) through the action of the ketone body β-hydroxybutyrate. eLife, 5, e15092. http://doi.org/10.7554/eLife.15092
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